皆さま、こんにちは♪
さて、今回は先日お伺いしたお客様のピアノ修理の模様をご紹介します。
ピアノは昭和47年製造のYAMAHA、「タッチの反応が鈍い」ということで・・・、特定の音・鍵盤だけなら潤滑剤添付等でとりあえずの対処もできますが、全体的に「タッチの反応が鈍い」のでお客様とご相談し今回は抜本的に修理することになりました。
こちらがお客様からお預かりした「アクション」。
これから「タッチの反応が鈍い」原因となっているセンターピンというピンの交換などを行っていきます。


まずは、アクションから「ウィッペン」という部品を外していきます。
この「ウィッペン」には「ジャック」という棒状の部品が付いており、この「ジャック」の動きが鈍いとタッチがモタモタした感じになります。とりあえず全部外して、後程このジャックの動きを1つ1つ確認していきます。


続いてハンマーバットという部品を外します。
ハンマーバットの根元に付いている「バットフレンジ」という部品の動きが鈍いと、こちらも同じくタッチがモタモタする原因になりますので・・・、1つ1つチェックしていきます。


この「バットフレンジ」、本来であれば矢印の方向に勢いよく動かなければいけないのですが・・・、動きません(汗)

1つ1つチェックしてみると「勢いよく動く」「動くけど・・・、動きが微妙に遅い」「ゆっくりと動く」「動かない」とそれぞれなんですね。

後述する「ジャック」もそうですが、この「バットフレンジ」の動きが鈍いと指の(早い)動きにハンマーがついてこれなくなってしまうのです・・・。


「バットフレンジ」の動きを良くするために、センターピンという小さなピンを交換していきます♪

まずはハンマーバットからバットフレンジを外して・・・、


こちらが「バットフレンジ」。

小さな赤いフェルトと左右に付いていますが、この小さな赤いフェルトの間を小さなピンが通っています。

このピンは回転軸になっており、このピンがクルクルとスムーズに動くことによってバットフレンジは動くのですが、動作不良のフレンジはこのピンがスムーズに動きません。


画像はセンターピンを外した後、ピンが通っている穴を左右均一にするためリーマーという専用道具で調整しているところです。

左右の穴の大きさが揃っていないと・・・、①ハンマーが左右にぶれる②ピンが抜ける・・、といったことになりかねないのでしっかり調整します。


こちらが交換するセンターピン、0,025㎜刻みで太いものから細いものまであります。

1つ1つのフレンジに適合する太さのピンを確かめて入れていきます。


センターピンを交換しました♪

フレンジの動きを確認します。
交換前はこの状態で動きませんでしたが・・・、


はい、きれいに動くようになりました♪

おっと、言い忘れておりましたが、この「バットフレンジ」の動きが鈍くなる原因ですが・・・、湿気によりフェルトや木部が膨張することで発生します。


修理の途中でいくつか「ハンマーバットフェルト」が擦り切れているのを発見!!

このままですと「カチカチ」という雑音が発生することがありますので、応急処置で修復します。


修復後です、本来でしたらこのフェルトも交換するのが良いのですが・・・、88鍵中5、6鍵でしたので今回は応急処置で済ませます。


「ハンマー・バットフレンジ」の作業が終了したら、今度は「ジャックフレンジ」の作業を行います♪

この長細い棒状のものが「ジャック」と言われる部品です。
このジャックも指の動きに合わせてスムーズに動かないと・・・、タッチがモタモタした感じになってしまいます。

酷いのになると完全に「動かない」ものもありますが(そうなると音が出ません)、このピアノの場合は動きはしますが・・・、動きが非常に遅い。


1つ1つの状態を確かめながら、センターピンを交換していきます。

専用の工具で動きが鈍くなっている古いピンを抜いていきます。

 


新しいピンに交換します。

こちらも1つ1つ適度な太さのピンを確認しながらの作業です。

 


ピンの交換と同時に、ジャックの頭に黒鉛を塗りこみます。
黒鉛は一種の潤滑剤です。

ピアノの発音の仕組みを動作する順番に説明しますと・・・

①鍵盤 ⇒ ② ウィッペン(ジャック)⇒ ③ハンマーバット ④弦を叩く・・・
という仕組みになっています。

ジャックの頭に黒鉛を塗りこむのは、②ウィッペン⇒③ハンマーバットの動きをスムーズに滑らかにするためです。

 

 


ついでにダンパースプーンという部品も磨きます。

ダンパーというのは「音を止める機構」で、このダンパーも鍵盤をタッチする度に動くのですが、ここを磨くことでダンパーレバーフェルトとダンパースプーンの摩擦を軽減することができます。

 


はい、きれいになりました♪

 


センターピン交換後は全てのハンマーバット、ウィッペン等の部品を付けて終了!!

とても地味な作業なのですが、作業後はスムーズにアクション機構が動きます♪
ピアノは沢山の小さな部品が連動して動くことで、発音する仕組みになっています。

この小さな部品ひとつひとつをスムーズに動くようにしてあげることで、タッチも軽やかに滑らかしてあげることができるのです。