最終更新日 2025年2月10日 by nozawa88888@gmail.com

フレンジコード:「タッチ」が”音になる”その狭間で

「タッチ」の運動エネルギーを「音」に変換する。

ピアノという楽器を
「力学的」に説明するとそうなりますね。

「音に変換」するまでの過程は”割とシンプル”なのですが、「精密」であることが求められます。
非常に高い精度で。

その「音」が「表現」にならなければならないから、です。

その「終わりなき”表現”への追及」を極めた結果。
それが、今のピアノの「機構」です。

今回はそんな「機構」の1つ。
「フレンジコード」のお話。

今回のピアノは、ご婦人が長年愛用しておられるもの。
そのピアノの「フレンジコード」の張替えを行いました。

打弦した「ハンマー」を”元の位置”に戻す

グランドピアノ アクション

グランドピアノのハンマーは「下から上」へ

グランドピアノの弦は「水平」に張られています。
ハンマーは下から突き上げるように打弦。

打弦したハンマーは「重力」によって元の位置に戻ります。

アップライトピアノハンマー

アップライトピアノのハンマーは「手前から奥」

一方、アップライトピアノの弦は「垂直」に張られている。
ハンマーは「横から」打弦するのです。

ですので、アップライトピアノのハンマーは「重力では元の位置に戻ることができない」のです。

ハンマーが弦を叩いた後、「元の位置に戻すための機構」がいる。

その1つが「フレンジコード」という紐。
「バットスプリング」というワイヤーに引っ掛けてあります。

経年劣化により”フレンジコード”は「切れ」ます

フレンジコード 張替え

切れたフレンジコードを張替える

今回、経年劣化により切れてしまったフレンジコードを張り替えます。

「タッチ」の力を、「余すところなく」音にする

フレンジコード張替え

音をより「クリアー」にする役割もあります

フレンジコードはハンマーが弦を叩いた後、「元の位置に戻すための機構」ですが、それ以外にも役割があります。

ハンマーの「運動エネルギー」分散を防ぎ、「余分な振動」を”抑制する”。
「タッチ」の力を、「余すところなく」音にする。

フレンジコード張替え

運動エネルギーを「余すところなく」音にする

これにより、「クリアな音の生成」と「スムーズな連打」が可能になります。

「力学的」に見ると、ハンマーの減衰振動を制御し、「動作軌道を安定化」させる効果があると言えます。

ダンパーレバースプリング

普段は作業できない「ダンパーレバースプリング」への潤滑処理も

今回、切れたフレンジコードを新しいものへ交換しました。

作業では、「適切なテンション」で張る事が重要。

テンションが強すぎるとハンマーの動きが阻害され、弱すぎると戻りが悪くなります。

また、普段は作業する機会の少ない「ダンパーレバースプリング」への潤滑処理も行います。

より「複雑」な仕組み、アップライトピアノ

アップライトピアノが開発されたのは1800年頃。
グランドピアノの発明から約100年後です。

限られたスペースでも設置できるアップライトピアノ。
多くの家庭で楽しまれてきました。

そのコンパクトな設計には、グランドピアノとは異なる機構 -より複雑な- が大きな役割を果たしているのです。
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「タッチの連打性能」 -トリルのような早い動き- について、あるいは「よりクリアな音」のご相談・ご質問、ご遠慮なく。
どうぞお気軽に。