ピアノのメンテナンス~運送・防音まで「お子さまのピアノレッスン」のお悩みご相談ください

「お子さまのピアノレッスン」でどこまで防音対策が必要か?

“溢れるほど”の防音情報を集めてみて(2025年1月)

最初に防音に関するページ・記事を書きましたのは10年前です。

防音に関する商品も随分と変わりました、増えましたね。
変わった(増えた)のは商品だけではありません。

情報を仕入れるための ーつまり何かを調べるための ー  ツールがとても増えました。
Youtube、Instagramをはじめとした各種のSNSですね。

10年前にもありました。
ただ「何かを調べるため」というより「エンターテイメント」としての意味合いが濃かったように思います。
昨年の夏(2024年)、「防音」に関する商品・情報を調べなおしたとき、上記メディアの情報の多さに少々混乱しました。

「お子さまのピアノレッスン」という視点で

私のサイトは「お子さまのピアノレッスン」に悩む親御さまに向けて発信しています。

「プロのミュージシャンでバリバリ弾きます」
「真夜中にライブ配信するライバー」
「絶叫しながらゲーム実況するyoutuber」

ではありません。

”立場の違い”によって求められる”防音性能”は違いますね。

「かけられる予算・時間」
も異なります。

「防音の目的」をしっかりと認識しないと情報収集もままならない。

そもそも本当に防音が必要なのか。
目の前の情報は「私の目的」に合致するものなのか。

年間で600台近いピアノを調律します。
この仕事20年しています。
ピアノの音でクレームになったのは、10件ないと思います。

「お子さまのピアノレッスンの防音」と視点で言うと、「完全防音」は不要だと思います。
「この商品の防音効果は何デシベルで・・・」という情報も基本いらないと思います。

目次

数ある”選択肢”を整理して、並べて”分類”する

”防音”に関する情報・製品を集めて並べてみます。
そこから”ピアノに関するもの”に絞り、分類できそうなものをそれぞれ再分類します。

そうすると以下の4つになると思います。

「① 部屋全体の防音」
「② ピアノ背面」
「③ 床下」
「④ 消音ユニット」

ひとつひとつ見ていきます。

① 部屋全体の防音 ~基本はプロ仕様~

「部屋全体の防音」は”子どものピアノレッスン”では不要です。
これは音楽を”生業”にしている方のものです。

つまりプロですね。

ピアノ防音室

ピアノ防音室(中古) ピアノ教師宅にて

具体的には

「防音室」
「壁面(吸音材・遮音材)」
「床下(吸音材・遮音材・二重床)」
「窓(二重サッシ・防音ガラスなど)」

かかる費用も「仕事なら出せる」レベルのものです。

こうした商品・対策の施工に携わったこともございますが、全て「音楽を生業としている」方です。

「防音室」についてはYAMAHAさん、スガナミ楽器さん(中古を扱っている)。
その他の商品・施工については、東京防音さんにお願いしました。

② ピアノ背面への防音 ~後方からの音を抑える~

アップライトピアノの場合、響板の建付け構造上
「前後方向」
に音が出ます。

一番ボリュームが大きいのは
「後方」です。
ピアノ 背面から音
「後方」から出る音をどれだけ抑えられるか、
というのはポイントです。

ここに
”音を吸収する”「吸音材」
”音を遮断する”「遮音材」

を取り付ければ、目的に叶う、ということになる。

ホームセンターに行ってご自身でDIYする器用な方もおられますが、「防音パネル」という製品がございます。
こちらの方が手軽ですね。
費用は¥50,000前後のものが多いです。

どの「防音パネル」が良のだろう

防音パネル

防音パネル 自宅にて

やはり、

「ピアノ関連製品メーカー」
「防音商品関連メーカー」

のものが安心です。

取付の際に少しコツがいるものもありますが、基本的にはお客さまご自身で取付可能です。

防音パネル、意味ないの?

私もこうした情報があることは知っていますし、そうした方々のサイトもYoutubeも確認しました。

おっしゃっていることはわかります。
とても良くわかります。

「プロのスタジオミュージシャン」
「毎日数時間練習する音大生」

には大変参考になるものだと思います。

が、「子どものピアノレッスン」にも同じことが言えるか、ということが問題です。
(発信者の方も、”ピアノを弾く方の属性”を明確にしているわけではありませんから、ある種の悪意があるとも思いません)

私は「子どものピアノレッスン」に”完全防音”あるいは、それに近いものは不要と思います。

「防音情報の沼」で困惑しているお父さま・お母さま、そんなにナーバスにならなくても大丈夫です。

“できること”から始めましょう。

③ 床下への防音対策 ~打鍵音を抑える~

マンション・集合住宅の方はお考えになると良いと思います。
後述していますが、”音の伝わり方”は2種類あります。

「空気伝搬音」
「固体伝搬音」

空気を伝わるか、固体を伝わるか、
の違いで、防音が難しいのは「固体伝搬音」です。

ピアノの場合は
「鍵盤を叩く音(打鍵音)」
「ペダルの音」

がこれに該当します。

床下への防音商品は

防音ジュータン グランドピアノ用

防音ジュータン ピアノ教師宅に設置

「防音ジュータン」
「防音マット」
「防音・防振インシュレーター」

等が挙げられます。

防音インシュレーター

防音・防振インシュレーター

私も全ての会社の製品を確認しているわけではありません。
選ぶ際のポイントがあると思います。

「YAMAHA・KAWAIなどの楽器メーカー」
「ピアノ製品関連メーカー」
「防音関連専門メーカー」

が安心だと思います。

④ 消音ユニット ~”サイレントモード”で弾けば音は出ない~

もはや説明不要かと思います。

ピアノの音を完全に”シャットアウト”する唯一の選択肢。
ボタンひとつで”サイレントモード”になり、装着しているヘッドホンからしか音は出ません。

消音ユニット取付

40年前のYAMAHAに消音ユニット取付 お客さま宅

おまけに”多機能”

「専用アプリとの連携」
「自動伴奏」
「録音機能」

気になるのは少々値が張るところでしょうか。
各社取り付け費用込みで、
¥200,000~¥250,000くらいです。

”消音ユニット”の抑えるべきポイント

費用のことも大切なことですが、抑えるべきポイントが2つあります。

「打鍵音は消えない」
「ピアノの初期設定を変える」

消音ユニットは「ピアノの音」は消せても、
「打鍵音(鍵盤を叩く音)」は消えません。

マンション・集合住宅の方は
「打鍵音対策 ーつまり床下への防音ー 」
も併せて考える必要があります。

ハンマー接近

ハンマー接近調整
お客さま宅

また、消音ユニット取付の際は少々
「初期設定」
を変えます。

「接近値(せっきんち)」
という
”打鍵時のハンマーと弦の距離”を拡げることになります。

ハンマー接近 

「初期設定」変更

「ピアニッシモが表現しづらい」
と感じるかもしれません。

やっかいなのが、
「サイレントモード」でも
「そうじゃなくても」
なのです。

”消音”という利便と差し引きして、ここをどう考えるか。
お弾きになる方それぞれ”答え”は違うと思います。

具体的な製品だと

2024年 6月、コルグ社がピアノ消音ユニット製造・販売の中止を決めました。
現行で製造・販売をしているのは以下のメーカー

YAMAHA サイレントユニット

YAMAHA サイレントユニット

「ヤマハ: RSC3 シリーズ」
「カワイ: AK-02 ATKシリーズ」
「ニッシンエレクトロ: ピアノメイト」
「ピアノディスク社(ドイツ):マジックスター」

それ以外のものもあるようですが(いずれも海外)、私自身が扱ったことがないもの。
ここでは省きます。

はやり国産ピアノですと、国内メーカーの方が良いと思います。

ピアノの防音対策の基礎知識を解説(音の伝わり方、防音の原理)

お子さまのピアノレッスンの”防音”を考える上で、上記記事以上の「知識」や「情報」は不要だと思います。

各種のSNSやwebサイトで様々な情報を網羅的・並列的に提供しているものがありますが
ーそれはそれで素晴らしいと思いますー
補足的な意味でご覧になるのがよろしいかと思います。

さて、以下は防音商品についての補足情報です。
考え方やそれに伴う基礎情報になります。
商品選びに必要と思いませんが、念のため。

音の伝わり方は2種類あります

説明する必要もないのですが、ご自身で「防音対策」をお考えの方もいらっしゃると思います。
ざっくりと基本的な考え方を解説いたします。

音の伝わり方は、
空気の振動として伝わる「空気伝搬音」
床や壁を直接振動させる「固体伝搬音」の2種類があります。

ピアノの場合は・・・、
「ピアノの音(響板から出る音)」が「空気伝搬音」で、
「打鍵音(鍵盤を叩くコツコツという音)」が「固体伝搬音」
ですね。

ピアノの防音を考える時
「ピアノの音」と
「打鍵音やペダルを踏む音」
の両方について考える必要があります。

「固体伝搬音(打鍵音)の方が対策が難しい・・・とされています。

防音用語「吸音」「遮音」「防振」について

これもまた、お勉強みたいな感じで申し訳ないのでが、
防音に関する用語につていもざっくり言います。

防音とは、「(外部へ漏れる)音を小さくすること」ですね。

具体的には、以下の3つの方法で音を小さくします。

<吸音>
音のエネルギーを「吸収」する素材を使って、音を弱める方法。
代表的な吸音材には、

ロックウール

ロックウール
ピアノ教師宅

「グラスウール」
「ロックウール」
「ウレタンフォーム」

多孔質(穴がいっぱい空いている素材)で、内部に空気を多く含む素材が適しています。
吸音材は、高音域の音に効果的です。

グラスウール

グラスウール お客さま宅

「遮音材」が「重くて」「硬い」ものなの

に対して、
「吸音材」は「軽くて」「柔らかい」もの

<遮音>
音の通り道を遮断し、音を跳ね返すことで、反対側への伝わりを弱める方法。

石膏ボード

石膏ボード ピアノ工房にて

「素材」で言うと、

「コンクリート」
「鉛」
「石膏ボード」

質量が大きく、密度の高い素材ほど遮音性能が高くなります。
遮音材は、低音域の音にも効果を発揮します。

「重くて」「硬い」ものほど、「遮音性能が高い」と言えます。

<防振>

防振ゴム

防振ゴム これは洗濯機用

「振動」を伝わりにくくすることで、
固体伝搬音を軽減する方法です。

ピアノの脚の下に
「インシュレーター」を敷いたり、
「防振ゴム」
のような素材を敷いて振動を抑えたり。

あるいはピアノを設置している床を
「浮き床構造」
にすることで、振動が床に伝わるのを抑えます。

防音パネルや防音室の基本は、遮音層と吸音層を組み合わせた「多層構造」

防音パネル

防音パネル お客さま宅

「防音室」「防音パネル」

の基本構造は同じで
「外側に遮音材」
「内側に吸音材」の二重構造、

あるいは
「遮音材で吸音材をサンドウィッチする」
三重構造になっています。

また、こうした「素材」も重要ですが、防音効果を高める要素はこれらの素材の
「すき間をなくす」「二重にする」
ということも重要な考え方です。

【重さ・厚さ】
「重さ・厚さ」は「遮音」にかかわることです。

遮音材はより「重い・厚い」ければ遮音性能は増す・・・、ということです。
ですので、素材としては「コンクリート」「石膏ボード」という非常に質量のある素材を使用することになります。

【すき間をなくす】
「音」は隙あらば「すき間」から逃げます。
すき間の具体例は「窓」「ドア」「換気扇」「エアコンのダクト」

DIYなんかだと遮音材と遮音材のつなぎ目を「補填剤」で埋めたりしますよね、これもそのためです。

【二重にする】
「二重する」ことの意義ですが、例えば、ピアノの音が壁を通して隣室に伝わる場合、1枚の壁であればその壁自体が振動し、音がそのまま外に伝わってしまいます。

二重窓

二重窓 ピアノ教師宅

しかし二重構造では、2つの壁の間に

「空気層」
「クッション材(吸音材)」

などを作ることにより、この空間が「音のバッファー」となります。
結果、外部への音漏れを抑えることができます。

「防音」とは違いますが、「音響」についても

音は物体の振動によって生じ、その振動が周囲の媒質(通常は空気ですね)を通じて「波」として伝わります。
その音が反響することにより、音はお部屋の環境と相互作用して人間の耳に届きます。

シンプルに言うと、まさに「響き」のことです。

調音パネル

YAMAMAの調音パネル
ピアノ工房にて

音響の専門家の方は「ヤービンの音響式」
という計算式を使って計算するらしい・・・。

わかりやすい例だとピアノを

「和室」に置いた場合と
「洋間」に置いた場合では、
「響き」が全然違います。

ピアノの「防音」を考えたとき
「音響」も(こだわる場合は)考えなければいけません。

防音対策、アップライトピアノとグランドピアノの違い

ピアノの響板(ざっくり言うと、「ピアノのスピーカー」のイメージ)はアップライトとグランドで建付けが異なります。
アップライトは垂直に(床に対して)、グランドピアノは平行に設置されていますので、それぞれ音が放射する方向が違うのです。

音が出る方向はそれぞれ
ピアノ 背面から音
【アップライトピアノ】

前面: 40%
背面: 50%
上面/下面/側面: 10% (分散)

構造上背面への音の集中がやはり大きくて、壁の反射により音量が増幅されます。

グランドピアノ 音の方向

【グランドピアノ (蓋を開けた状態)】

下面 (床方向): 40%
上面: 30%
前面/背面/側面: 30% (分散)

蓋(大屋根といいます)の開閉状態によって違いますが、やはり下方向への音量が一番大きいと言われています。

(下方向は響板が「剥き出し」状態ですので)。それぞれの防音対策を考えると、

「アップライトピアノは背面への防音」
「グランドピアノは下面への防音」

というのが基本的な考え方。

※上記は「ピアノの音(空気伝搬音)」への対策の違いで、「打鍵音(固体伝搬音)」へはほとんど同じです、アップライト・グラント共に「床下への防音」が重要になります。

おまけ:防音グッズを探しに「ニトリ」と「コーナン」に

ちまたで話題の防音グッズを探しに、近所(千葉県柏市)のホームセンター(コーナン)とニトリに行ってみました。

【ニトリ編】
ネットで調べると「タイルカーペットハーゲンMGY」と「弾力に優れている木目調パズルマット」という商品が出てきます。
早速売り場へ・・・、両商品共に全く別の売り場にありました。
ニトリ 防音 タイルカーペット

こちらがタイルカーペット売り場。
こんなに色展開があるのですね。

ニトリ 防音カーペット
大きさは50×50cmの正方形、私の手の大きさと比べて・・・、イメージが伝わりますでしょうか?

ニトリ 防音マット
厚みは0.7cmでこんな感じ。

ニトリ 防音マット
お値段は「¥379」。

仮に、これをアップライトピアノの下に敷き詰めると、横4枚・縦2枚で合計8枚必要です。

お値段は¥379×8枚=¥3,032(税込み)。

確かに値段だけで見るとかなりお手頃です・・・。

ニトリ、木目調パズルマット
続いて「木目調パズルマット」
大きさは先ほどのタイルカーペットに比べて、一回り大きい感じ。

53.5×53.5cmの正方形。

ニトリ 木目調パズルマット
商品のパッケージに「防音」の表記があります。

ニトリ 木目調パズルマット
厚さも1.6cmと先ほどのタイルカーペットに比べて厚い。

「木目調パズルマット」は4枚一組で販売されております。

木目調パズルマットお値段は¥1,790(4枚一組)。
これもアップライトピアノの下に敷き詰めると8枚必要ですので、¥1,790×2組=¥3,580(税込み)。

【コーナン編】
「オリジナルコルクマット」
「オリジナルEVAジョイントマット」

という商品をリサーチしに行ったのですが、店内にそれらしきものが見当たらないので店員さんに聞きました。

「あー、その商品は「コーナン Pro」では取り扱いがないんですよね、普通のコーナンならあります」

私が行ったのは「コーナンPro」、つまり工務店の方々などが利用する、つまりプロ向けの店舗。
(私も時々利用するので、安易にリサーチしに行きました)
建材メーカーの商品はあっても、一般家庭用のものは殆どありません。

という訳で、何かの役には立つだろうと防音商品を探しました。
(ちなみに、「オリジナルコルクマット」「オリジナルEVAジョイントマット」はAmazonで売ってましたので、調べてみてください)
防音 遮音シート
最初に見つけたのは株式会社泰邦という建材メーカーの「防音・制振Dマット」

お、このマットの上にコルクマット敷いてピアノを設置できるのでは?と思いましたが、「床下地材」ということですので、ちょっと無理そうですね。

防振Dマット

説明を読むと
「特殊なダイヤエンボスにより、マット面と床面との設置面積が減り衝撃音を効果的に緩和させる防音床下地材」

とのことで、「二重底」の理屈と同じく、「床との接地面積」を小さくすることで固体伝搬音を抑える、というマットです。

ダイケン 遮音シート
ダイケンの遮音シートもありました。

遮音シートは
「ダイケン」
「サンダム」
が2大メーカーだと思います。

ちなみに「防音パネル 静音 :イトマサ」の「遮音層」には「サンダム」が使用されています。

サウンドガード
こちらは「八幡ねじ」という建材メーカーの商品、
「サウンドガード」。

スポンジ状の「吸音層」と外側の「遮音層」の2層構造。

大きさも「防音パネル」と同じくらいの大きさで、これをピアノの背面に設置するのはアリでは?
と思ってしまいました。

サウンドガード
ただ、厳密な大きさは1820cm×910㎝(厚さは5㎝)
なので、そのままは使用できないですね。

「防音パネル」は150㎝×110㎝が一般的な大きさですので、少しDIYする必要がありそうです。

最後に

「防音問題」
とても難しい問題です。

このページをリニューアルする前にも書きましたが、騒音の問題は

「実際に音がもれているか」よりも
「その音が気になるかどうか」ってことが問題の本質だったりします。

「弾く時間を含め、十分気を付けますが何か気になることがありましたらおっしゃって下さい」

とあいさつすると良いと思います。
音の問題について配慮してるって気持ちが伝わりますし。

弾く時間帯

常識的には9:00~20:00くらいでしょうか・・・。
マンションの場合、弾く時間が規則として決められているところもありますので・・・、その場合は厳守ですね。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
防音に関するお問合せ・お悩み相談、どうぞご遠慮なくご連絡ください。
どうぞお気軽に。

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