最終更新日 2025年11月30日 by nozawa88888@gmail.com
少し風変わりなお話から始めたいと思います。
この記事の構想を考えていた時に、よぎったこと。
今現在(2025年)国内の「中古ピアノ市場」ってどんな感じなのだろう。
調べてみました。
残念ながら「国内で販売された中古ピアノの台数」を正確に計測した統計データは存在しませんでした。
(新品はメーカー(ヤマハ・カワイ等)が出荷数を国に報告しますので、正確なデータが存在します)
中古ピアノは「街の楽器店」「工房」「ネットオークション」「個人売買」などルートが複雑。
国も把握できていないのが実情らしい。
しかし、民間調査会社(矢野経済研究所など)のレポートや、業界の推計値から、かなり精度の高い「概算」は出ていました。
台数:年間 約18,000台 〜 25,000台
新品のアコースティックピアノの販売台数は年間約10,000台ですので、ほぼ倍ですね。
私のところにも、中古ピアノに関するご相談が増えたと実感しています。
特にメルカリ等での個人間取引でのご相談は多くいただきます。
※メルカリでのピアノ選びの注意点についてはまとめております。
ピアノ調律師が解説|メルカリでのピアノ購入 「注意点」と”5つ”の確認すべきポイント
今回は中古ピアノにまつわる失敗・トラブル事例から「何を学ぶべきか」を考えます。
中古ピアノはその性質上少なからず「リスク」は存在ます。
「まずは正しい認識を持つ」ことから始めてみてはいかがでしょうか。
目次
- 【ケース1 中古ピアノ販売店】:見た目だけではわからない「後付け部品」
- 【ケース2 中古ピアノ販売店】:「部品を交換してある」は良いことか?
- 【ケース3 メルカリ】:メルカリピアノの代表的なリスク「虫食い被害」
- 【ケース4 メルカリ】:写真では伝わらない「汚れ・臭い」の問題
- 【ケース5 メルカリ】:なかなか確認できない場所「背面」の問題
- これらのトラブルを防ぐために~後悔しないための対策を考える~
- 最後に・・・、中古ピアノ選びは大変
ケース1 中古ピアノ販売店:見た目だけではわからない「後付け部品」
取り替えた部品が、かえって不具合を起こす、ということがあります。
あるいは、もともとなかった機能を追加することで生まれる不具合。
「ピアノの蓋が閉まらない」
ご相談を頂いたときに「そんなことあり得るの?」と思いました。
今までありませんでしたら、そんなトラブル。
実際にピアノを見てみると・・・、蓋が閉まっていない。
どうしたことでしょう。
ピアノというものは「物理的」なものであって「科学的」なものではありませんので、まぁ、原因は「目で見える」場合が多い。
その閉まらない蓋を動かしてみると、向かって右側が「突っかかって」いる。
その原因は極めて簡単なものですが、どうして右側がそうなっているのか、理由がわからない。
それから2時間格闘です、その蓋と。
先の見えない格闘の末、怪しい部品がありました。
「スローダウンシステム」
ピアノの蓋が「ゆっくり閉まる」あれです。
ますます怪しいのは、どう見ても「後付け」です。
しかもかなり雑に「蓋の一部をゴリゴリとカットした形跡」もあります。
その「後付けしたスローダウンシステム」によって蓋の蝶番に負荷がかかり、「蝶番そのもの」が捻じ曲がっておりました。
リニューアルしたピアノですが、「元々なかった機構」をつけたことによるトラブル。元の部品を加工し、新しい機構を取り付けることが裏目に出たケースです。
【教訓と対策】
便利な機能が後付けの場合、不具合のリスクがあることは事実です。
例えば、後付けの消音ユニットなどもそれに当たります。
後付けの機構を「取り付ける」のにピアノ本体にネジで固定しますので、そのネジが緩み「雑音の原因」になるケースもありますね。
「その機能は本当に必要か?」
を考えることは、こうしたリスクを避けることにもなりますし、費用を抑えることにもなります。
一度立ち止まって考える価値はありそうです。
ケース2 中古ピアノ販売店:「部品を交換してある」ことは良いことか?
日本のピアノってちょっと変わっています。
ピアノ部品の総数は数千。
そのほとんど全ての部品「ピアノメーカー」が作っている。
海外はそうではありません。
例えば「ハンマー」という”主要な”部品。
「ハンマー」だけを作っているメーカーが存在し(例:レンナー社 アベル社 いずれもドイツ)、スタインウェイなどは「レンナー社製」のハンマーを採用しています。
なので、リニューアルしているピアノの場合「ハンマーはYAMAHAの純正ではなく、海外のものに交換してある」場合があります。
そうしたピアノで「音が出ない」と相談いただいたケース。
「音が出ない」原因も極めて単純なものが多いのですが、直すとなると「難しい」こともあります。
今回の問題は、「ハンマーとバックチェックの嚙み合わせ」が上手くいっていませんでした。
弦をたたいたハンマーという部品は、バックチェックという部品が動作を制御します。
ハンマーが新しいものに交換されていたのに対し、バックチェックは元のまま。
ピアノは「すべてが連動して動く」もの。
「一部を新しいものにする」弊害が出たケースです。
【教訓と対策】
一部だけ高性能な部品に交換されていると、逆に不具合の原因になることもあります。
工房や売り場では問題ないピアノが、ご自宅へ納入した数か月後に問題となるケースもあります。

こうした問題を未然に防ぐのはとても難しいのですが、「保証期間」を確認することは必要かと思います。
これはピアノに限りませんが部品は「純正パーツ」が安心です。
「このパーツは純正ですか?」
なんて質問しずらいと思いますので、「海外のパーツ使用」というものは少し注意が必要かもしれません。
ケース3 メルカリ:虫食い被害
メルカリでピアノを購入した場合の「代表的なリスク顕在化の例」です。
メルカリでの購入の場合、「内部が確認できないこと」が特に問題です。
話は少し逸れますが、メルカリでは車も出品されている。
私の弟がメルカリで車を購入したので、初めて知ったのです。
あぁ、そんな時代なのだな。
次の瞬間、「大丈夫なの(安全性)?」
そう思いました。
メルカリで車を購入する場合、「おまかせクルマ取引」という方法があるのですね。
車両の書類手続き、輸送、車両の状態チェックなどを専門業者に任せることができる。
車の安全性は「命に関わる」問題ですので、当然です。
ピアノの場合はそうではありません。
ですから、「おまかせピアノ取引」もなければ、取引に専門業者も介在しません。
「鍵盤からガタガタ酷い音がする」というピアノはメルカリで出品されていたものでした。
鍵盤蓋を外し、鍵盤を外します。
見事に「虫食い」でした。

ピアノには多くの羊毛フェルトが使用されています。
まさに「羊と鋼の森」ですね。
使用される羊毛は総じて「高品質な羊毛」ですので、虫が好んで食べます。
衣替えで、お気に入りのセーターが虫食い被害にあったとき同等の(あるいはそれ以上の)ショックがあります、ピアノの場合。
【教訓と対策】
メルカリで購入する場合のリスクは「内部が確認できないこと」にあります。
「サビ」「虫食い」「ホコリ・カビ」が代表的なリスク。

メルカリは「賢い買い物」ができるプラットホームだと思いますし、利用されている方も多い。
私も利用します。
これを防ぐ一番の方法は「試弾」でしょう。
実際に弾いてみて違和感がないかどうか。
面倒でしょうか・・・、でもやってみることをおすすめします。
※メルカリでのピアノ選びの注意点についてはまとめております。
ピアノ調律師が解説|メルカリでのピアノ購入 「注意点」と”5つ”の確認すべきポイント
<「メルカリでのピアノ選び」ご相談下さい>
メルカリでのピアノ選びに関するご相談(フォーム)
お電話でもお気軽に: 04-7129-6057
ケース4 メルカリ:写真では伝わらない「汚れ・臭い」の問題
メルカリで「わからない」のは「内部」もそうですが、「臭い」「汚れ」もそうです。
「汚れ」は画像からわかりそうですが、「黒いピアノ」は難しい場合もあります。
黒いピアノは「鏡面仕上げ」が大半ですので、白く濁っているもの(タバコのヤニ・油汚れ)は画像でも判別可能です。
ただ、「部分的に酷く汚れているケース」や「斑点状のカビが繁殖しているケース」など、画像だけでは判断が難しいピアノもあります。
「やや汚れや傷がある」
状態の項目にそう記載があっても、自分のイメージと異なる・・・、という問題はピアノに限りませんが。
ただ、ピアノの場合は「高額商品」であると同時に「インテリア」という側面もあり、「自分のイメージと違う」ショックは小さくないですね。
また、「臭い」の問題もあります。
「カビの臭いがする」というピアノで響板・内部の除菌クリーニングをしたピアノ。
これもメルカリで出品されていたものでした。

「臭い」に対する感覚は人によって異なりますね。
出品者さまは「気にならなかった」のだと思います。
ですが、購入者さまはダメだったのですね、その臭いが。
【教訓と対策】
黒いピアノの汚れは、写真では非常にわかりにくいことがあります。
臭い(タバコ・カビ)は内部に染み付いていることもあります。
この問題も「試弾」することで確認できると思います。
汚れについては、気になる箇所を「追加で画像をアップしてもらう」という方法が一番手軽かもしれません。
ケース5 メルカリ:「致命的な欠陥」響板割れ
メルカリでの出品者画面だけでは確認できない場所がもう1つ。
「響板」
ピアノの「背面」です。
「響板」はピアノにとって「心臓部」とも言われるほど。
何故か。
ピアノの音は「響板」から出ているからです。
「響板」がなければ、”ピアノの音”は出ません。
ピアノの響板は、「背面」「裏側」に位置しているため、私のような技術者もほとんど確認する機会はありません。
ピアノ運送の担当者が「運送時に」裏側から確認し、異常を発見する。
このケースが一番多いと思います。
メルカリでのピアノ購入にあたり、購入前から相談いただいていた方。
条件に合うピアノを見つけ購入。
私が運送業者を紹介し、ピアノ運送の日程も決まりました、あとはピアノの到着を待つだけ。
しかし運送当日、運送担当者から私に電話がありました。
「響板が割れています」
【教訓と対策】
このケースを未然に防げたか?と言えば、確かに難しかったかと思います。
調律師もピアノの背面(響板)を確認することが多くありません。
異常が顕在化して、例えば「ビリビリ」という酷い雑音がするなど、初めて「響板」を確認します。
ただ、大手メーカー以外のピアノの場合こうしたリスクは高まる・・・、というのは事実かと思います。
個人間取引の場合、価格・画像など以外に、「メーカー」や「製造年月日」を確認することは大切だと思います。
これらのトラブルを防ぐには・・・その対策を考える
まずは、多くの中古ピアノ店ではしっかりとした整備をされたピアノが販売されていることはお伝えしておかなければなりません。
その上で、上記のようなトラブルを防ぐにはどうすれば良いか、その対策を考えます。
一番良いのは、ピアノに関して知見がある方にアドバイスをもらう、ということでしょうか。
「ピアノの先生」「調律師・技術者さん」がそれに当たります。
こうした方は地域の「中古ピアノ店」と実際に取引実績があったりします。
おそらく「複数の」お店と取引していることが多いと思います。
そうした方に協力いただくことは安心材料になりますね。
多くの「ピアノの先生」「調律師さん」は親身になってくれるはずです。
難しいのが「メルカリ」で購入するパターンです。
トラブルを避けるためには、「試弾」させてもうらうことが一番良いと思います。
一番の理想は、「ピアノの先生」や「調律師さん」に同行していただく・・・。
当然、出品者の方の同意を得なければなりませんが、丁寧に事情をお伝えすることでお互いにとって良い取引になると思います。
※メルカリでのピアノ選びの注意点についてはまとめております。
ピアノ調律師が解説|メルカリでのピアノ購入 「注意点」と”5つ”の確認すべきポイント
<「メルカリでのピアノ選び」ご相談下さい>
メルカリでのピアノ選びに関するご相談(フォーム)
お電話でもお気軽に: 04-7129-6057
最後に:中古ピアノ選び、とても大変ですね
私もこの記事を書きながら、「中古ピアノ選び、なかなか大変だな・・・」と思ってしまいました。
「購入者」の立場になって、想像力を膨らませて考えてみるとなかなかに難しい、そう思います。
中古ピアノと言っても決してお安い買い物ではありません。
楽器店でも、¥300,000~
メルカリでも、¥100,000~
といった感じでしょうか。
慎重になるのも当然ですし、そうなるべき、とも思います。
さらに、防音のことや置き場所のことなど、ピアノ購入と同時に考えなくてはならいこともあります。
お仕事・ご家庭のことで多忙なみなさまが、これをこなすとなると相当な労力を要するのではと想像します。
でも「どんなピアノが良いかな?」
ご家族やお子さまたちと、ネットでググったりすることはとても楽しい時間です。
私の経験上、こうして悩んでいる時間もきっと「良い思い出」になる、そう思います。
お付き合いのある「ピアノの先生」や「調律師・技術者さん」がいらっしゃる方は、聞いてみるのが良いかも、と思っております。
もちろん私に相談していただいても全然かまいません。
中古ピアノに関するご相談(フォーム)
お電話でもお気軽に: 04-7129-6057
この記事を書いた人

野沢 信之(のざわ のぶゆき)
ピアノ調律師(国家資格)
あん摩マッサージ指圧師(国家資格) 鍼灸師(国家資格)
1975年生まれ。千葉県出身。明治学院大学卒業後、出版社に3年半勤務した。その後、千葉県にあるピアノ工房にて5年勤務の後独立。
現在「野沢ピアノ」代表。公共施設・一般家庭のピアノメンテナンスを行っている。「お子さまのピアノレッスン」に関するピアノのご相談へアドバイスすることが多い。
治療院「けあ・あんだんて」代表でもある。一般社団 障がい児マッサージ普及協会所属。主に「障がいを持ったお子さま」への訪問施術・治療を行っている。
千葉県生涯学習大学講師を含め「地域医療」や「障がい者への理解普及」等の講演活動も行っている。






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