最終更新日 2024年10月31日 by nozawa88888@gmail.com

調律師目線:ピアノ運送業者の選び方

先日、あるお客さまから「ピアノ運送」についてのご相談を頂きました。
千葉県近郊の業者さまでしたら複数社見積もりを取ったり相談に乗れるのですが、ちょっと遠方の方でしたので、様々アドバイスさせていただきました。
「ピアノ運送」についてはご相談いただくことがとても多いので、調律師目線で記事を書いてみました。
この記事をご覧いただいている方は、「実家から」ピアノを運ぼうかな・・・、とお考えの方が多いかと想像します。
この記事をお読みいただければ「運送会社の選び方」や「料金の目安」「運送時に考えたいこと」など、「ピアノ運送」に関することの大半がお分かりいただけると思います。
⁽記事を読んで、ご質問があればご遠慮なく連絡下さいませ⁾

目次

ピアノ配送に必要な業者の条件を考えた・・・

これは言わずもがな・・・、ですが「ピアノ専門」の運送業者を選んでくださいね。

ピアノは家具や家電と違い非常にデリケートな「楽器」です。
それも他の楽器と違い部品の数が非常に多いのです。
専門知識と経験のあるピアノ運送に特化した業者を選ぶことは、運送後のピアノの状態にとってとても重要です、運送後のメンテナンスをする調律師・技術者も苦労します(笑)。

安い運送業者の見つけ方

当然ですが、複数の業者から見積もりを取り比較することは大切かと思います。
今は「料金一括比較サイト」などもありますので、とても便利です。
ただ、「料金が安い」ことは「1つの判断材料」だということも、考える必要があるかと思います。

評判の良いピアノ運送業者を見つけるために・・

ここが大変難しいのですが、オンラインの口コミやレビューをチェックしてみても良いかもしれません。信頼できる知人からの紹介も有効です。
ただ、「調律師さん」に相談することが一番良いかな・・、と思っています。(いきなり我田引水みないな話ですみません、ただ、フェアに考えるとそうだと思います)
私を含めて多くの調律師・技術者さんは複数の運送業者と仕事をしています。運送後、ピアノのトラブルは「調律師・技術者」さんが対応することが大半なので、忖度なしで公平なアドバイスしてくれると思いますよ。

ピアノ運送業者の料金相場

ピアノ引越しの料金の相場

多くのピアノ運送業者は「移動距離」によっておよその料金を設定しています。
以下は「アップライトピアノ」の相場です、ご参考までに。

  • ~10km: 約18,000円
  • ~20km: 約20,000円
  • ~30km: 約22,000円
  • ~40km: 約24,000円
  • 50km~79km: 約28,000円
  • 80km~99km: 約34,000円
  • 100km~120km: 約38,000円

続いて「グランドピアノ」は以下の通り

  • ~10km: 約32,000円
  • ~20km: 約34,000円
  • ~30km: 約39,000円
  • ~40km: 約40,000円
  • 50km~79km: 約49,000円
  • 80km~99km: 約61,000円
  • 100km~120km: 約68,000円

「ピアノの運送」って全く想像できないですよね・・・。
中には「10万円くらいかかるかな汗」みたいな方もおられますが、そんなにかかりません。
これをご覧いただいている方は「実家からピアノを運ぼうかな」と思っている方だと思いますので、ご実家からの移動距離を距離計算していただけると料金の目安になると思いますよ。

料金が安い業者の特徴

これもよく質問されます(汗)
私も複数社に運送の見積もりを取って、10000円以上も金額差があると「こんなに差があるのはなぜですか?」とご質問されます。うーん、長くなりそうなので理由を1つに絞ると(理由は複数ございます)「1日のうちにより多くのピアノを運ぶ業者はお安い傾向にあります」とご説明しております。「効率的」とも言えますが、その他の表現もあるわけです・・・。

見積もりを取る際のポイント

見積もりを取る際には「住所」はもちろん、戸建ての場合1Fか2F」、マンションの場合は「何階」「エレベーター有・無」は必ず聞かれますので確認を。また「外階段が5段以上あるか」等も確認しておくと見積もりがスムーズに出ます。

信頼性のある運送業は何が違うの?

ピアノ搬送に必要な技術と経験

「ピアノ運送」「技術」「経験」が求められる仕事です。
「ピアノに関する知識」だけでなく「防音」「設置場所」に関する知識も求めれます。

何より、移動元・移動先は1件1件違う環境ですので、「経験」が非常に求められます。
搬入経路によっては「窓を外す」「ドアを外す」必要性もありますし、ユニック車よるクレーン作業はなどもユニック車の停車場所も「経験」が必要なのです。

A社には「搬入不可能」と判定された案件でも、B社ではあっさりと搬入できたこともあります。
「野沢さん、あの案件はウチじゃなきゃダメですね 」by B社担当、とドヤドヤした感じで言われたこともあります(笑)

※設置場所についてはコチラのページをご覧くださ

ピアノ運送の作業内容と方法

丁寧な搬入・搬出作業を行うために必要なもの

運送の際には専用の「ピアノ専用カバー」及び「クッション材」を使用します。
クッション材でピアノ本体を保護し、搬入の際に住宅の壁や廊下を傷付けないためです。
また、運搬中にピアノ本体を汚さないためにも使用されます。

天候、特に雨の日には運べるの?

これもよく質問されます。
はい、基本的には大丈夫です。雨の日には専用の「防水カバー」をピアノ本体に覆いかぶせて運送します。ただし、「台風」「暴風雨」の場合は日程が延期されることもあります。
私の経験上、延期されるケースはほとんどありません。

ピアノ本体は解体するの?

これも時々質問されます。
グランドピアノ「本体」と「脚部」に解体して運送・移動しますが、アップライトピアノ基本解体せず、そのまま運送します。

ただ、搬入経路の関係で「解体しないと入らない」という場合(非常にレアケースですが)は解体するのです。
予め「入らない」ことが確実な場合は搬入元で解体しますし、搬入先で「あらら、これは解体しなきゃ入らんね」という場合はその場で解体します。

ここでも運送会社の実力が試される・・・、というわけです。

ピアノ運送に伴う「搬入経路の確認」について

とても想像力のあるお客さまの場合、「ウチの●●の部屋にピアノ入るの?」と質問されることがあります。
過去の経験上、「入らない」ことはほとんどありません(20年調律師やってますが、1件だけですかね)。

心配な場合は運送会社に「事前の搬入経路確認」をしてもらうこともできます。
「経路確認」の料金は¥2,000~¥3,000程度。ただ、実際にその運送会社に運送を依頼すれば「運送料金」から「経路確認の料金」を差し引いてもらえますので、実質無料です。
経路に不安がある方は「経路確認」してもらうと安心ですね!

ピアノ運送の際、一緒に考えたいこと

メンテナンスやクリーニングの必要性

ピアノを運送する機会って、ほとんど人生に1回あるかないか・・・、じゃないでしょうか。
私の経験上、「子どものピアノレッスン用に、実家からピアノを運びたい」という方が大半だと思います。
そこでお考えいただきたいのが「メンテナンス」のことです。

ピアノは製造から40年程度での「オーバーホール」が推奨されております。
オーバーホールと言っても内容は様々です。「使用頻度」「今までのメンテナンス内容」「設置環境」によって、必要とされる修繕内容は変わって参ります
こうした修繕は「ピアノ本体を工房・工場」に入れて行うことも多いため、移動の際にご検討いただくのがとても合理的です。(オーバーホールの為にピアノを移動するのは・・・、面倒ですし何より費用がもったいないです)

オーバーホールについてはコチラをご覧ください。
クリーニングについてはコチラをご覧ください。

地味に問題となる「ピアノ椅子」と「インシュレーター」

「ピアノ椅子」「インシュレーター」もピアノ移動・運送に伴い考えたいところです。
特に「インシュレーター」ですが(インシュレーターというのはピアノのキャスター下に設置する「お皿」のような商品です)、「耐震用のもの」と「そうでないもの」がございます。
耐震用のものでない場合は、移動の際に耐震用のインシュレーターへの交換をおすすめします。

ここで少々お得な情報を・・・、ピアノ運送会社では「耐震用インシュレーター」「ピアノ椅子」のリニューアル品を売っているところも多いです。
新品で購入すると、「インシュレーター:¥20,000程度」「ピアノ椅子:¥8,000~」ですが、リニューアル品ですとそれぞれ¥5,000+税くらいです。

運送会社の担当者に「中古・リニューアルのインシュレーターってありますか?」と聞いてみるものアリだと思いますよ。

まとめ:「ピアノ運送業者選び」って結構大変

こうして記事にしてみると「ピアノ運送を選ぶこと」、またそれに伴い考えなければいけないこと・・・、結構ありますね。
自分で記事を書いていても「結構めんどいな・・」と思ってしまいました。
実は「ピアノの置き場所」や「防音」に関しても考えなければならなのですが、記事が長くなりそうなので、またの機会に書きますね。
1つ1つ懸念事項を確認したり、ネットで調べたりすると「まぁまぁ面倒」です(涙)。
ですので、お付き合いのある調律師・技術者さんがいらっしゃる方は、聞いてみるのが良いかも・・・ですね。
あ、もちろん私に相談していただいても全然かまいません!