最終更新日 2025年4月14日 by nozawa88888@gmail.com

調律師目線:ピアノ運送業者の選び方
~ピアノのある生活の出発点~

あるお客さまから「ピアノ運送」についてのご相談を頂きました。

お相手は大分県別府市にお住まいの方。
千葉県からはだいぶ距離があります。
千葉県近郊のお客さまでしたらいくつか運送会社をご提案できるのですが、その際はアドバイスだけ。

なんでも、色んな運送会社に「搬入が難しい」と断られたのだとか。

ピアノの運送は様々なケースがあります。
重機を使わずすんなりいくケースもあれば、大型クレーンを使用しなければならないケースもあります。

搬出・搬入の状況は様々です。
大分県からわざわざお電話をいただき、そんなことを改めて実感した出来事でした。

「ピアノ運送」についてはご相談いただくことがとても多い
今回は調律師目線で記事を書いてみました。

この記事をご覧いただいている方は、「実家から」ピアノを運ぼうかな
とお考えの方が多いかと想像します。

この記事をお読みいただければ
「運送会社の選び方」や
「料金の目安」
「運送時に考えたいこと」など、
「ピアノ運送」に関することの大半がお分かりいただけると思います。

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目次

ピアノ配送に必要な業者の条件を考えました
~ピアノという楽器に思いを馳せる~

まずは「ピアノ専門」の運送業者を選んでください。

ピアノは家具や家電と違い非常にデリケートな「楽器」です。
部品の数は8,000~12,000個に及びます。
素材も「気温・湿度」に左右される木材・フェルトといった天然素材。
他の楽器と違い部品の数が非常に多いのです。

専門知識と経験のあるピアノ運送に特化した業者を選ぶことは、運送後のピアノの状態にとって、とても重要です。

安い運送業者の見つけ方
~料金という1つの指標を手に入れる~

複数の業者から見積もりを取り、比較することは大切かと思います。
今は「料金一括比較サイト」などもありますので、とても便利です。

ただ、「料金が安い」ことは「1つの判断材料」だということも、考える必要があるかと思います。

また、一括料金比較サイトの問題を1つ。
「ピアノ専門ではない」運送会社が「ピアノも運びます」という建前で登録していることも多い。
ここの見極めはとても難しいと思います。

評判の良いピアノ運送業者を見つけるために
~「選ぶ」ことの難しさ~

ここが大変難しいのですが、オンラインの口コミやレビューをチェックしてみても良いかもしれません。
信頼できる知人からの紹介も有効です。

ただ、「調律師さん」に相談することが一番良いかな、と思っています。
限りなく「フェアな視点」に立って、私の経験則としてもそう言えると思います。

私を含めて多くの調律師・技術者さんは複数の運送業者と仕事をしています。
運送後のピアノのトラブルは「調律師・技術者」さんが対応することが大半です、忖度なしで公平なアドバイスしてくれると思いますよ。

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ピアノ運送業者の料金相場
~「相場を知る」の大切さ~

ピアノ引越しの料金の相場

多くのピアノ運送業者は「移動距離」によっておよその料金を設定しています。
以下は「アップライトピアノ」の相場です、ご参考までに。

  • ~10km: 約18,000円
  • ~20km: 約20,000円
  • ~30km: 約22,000円
  • ~40km: 約24,000円
  • 50km~79km: 約28,000円
  • 80km~99km: 約34,000円
  • 100km~120km: 約38,000円

続いて「グランドピアノ」は以下の通り

  • ~10km: 約32,000円
  • ~20km: 約34,000円
  • ~30km: 約39,000円
  • ~40km: 約40,000円
  • 50km~79km: 約49,000円
  • 80km~99km: 約61,000円
  • 100km~120km: 約68,000円

「ピアノの運送」って全く想像できないですよね。
中には「10万円くらいかかるかな」みたいな方もおられますが、そんなにかかりません。

これをご覧いただいている方は「実家からピアノを運ぼうかな」と思っている方だと思います。
ご実家からの移動距離を距離計算していただけると料金の目安になると思いますよ。
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料金が安い業者の特徴
~料金は何を物語るか~

これもよく質問されますね。
私も複数社に運送の見積もりを取って、10000円以上も金額差があると
「こんなに差があるのはなぜですか?」とご質問されます。

長くなりそうですので、理由を1つに絞ると(理由は複数ございます)
「1日のうちにより多くのピアノを運ぶ業者はお安い傾向にあります」とご説明しております。
「効率的」とも言えますが、別の表現もあるわけです。

見積もりを取る際のポイント
~効率良くコミュニケーションするために~

見積もりを取る際には「住所」はもちろんです。

戸建ての場合1Fか2F」
マンションの場合は「何階」「エレベーター有・無」
は必ず聞かれますので確認を。

また「外階段が5段以上あるか」等も確認しておくと見積もりがスムーズに出ます。

信頼性のある運送業は何が違うか?
~対応力の違いについて~

ピアノ搬送に必要な「技術」と「経験」

ピアノ運送移動の様子
「ピアノ運送」
「技術」「経験」が求められる仕事です。

「ピアノに関する知識」だけでなく「防音」「設置場所」に関する知識も求めれます。

何より、移動元・移動先は1件1件違う環境です。
「経験値」が求められます。

搬入経路によっては「窓を外す」「ドアを外す」必要性もありますし、ユニック車よるクレーン作業はなどもユニック車の停車場所も「経験」が必要なのです。

A社には「搬入不可能」と判定された案件でも、B社ではあっさりと搬入できたこともあります。
「野沢さん、あの案件はウチじゃなきゃダメですね 」B社担当、とドヤドヤした感じで言われたこともあります。

 

ピアノ運送の「作業内容と方法」
~運送当日のイメージを持つ~

丁寧な搬入・搬出作業を行うために必要なもの

運送の際には専用の「ピアノ専用カバー」及び「クッション材」を使用します。
クッション材でピアノ本体を保護し、搬入の際に住宅の壁や廊下を傷付けないためです。
また、運搬中にピアノ本体を汚さないためにも使用されます。

天候、特に雨の日には運べるの?

これもよく質問されます。
はい、基本的には大丈夫です。

雨の日には専用の「防水カバー」をピアノ本体に覆いかぶせて運送します。
ただし、「台風」「暴風雨」の場合は日程が延期されることもあります。
私の経験上、延期されるケースはほとんどありません。

ピアノ本体は解体するの?

これも時々質問されます。
グランドピアノ「本体」と「脚部」に解体して運送・移動しますが、アップライトピアノ基本解体せず、そのまま運送します。

ただ、搬入経路の関係で「解体しないと入らない」という場合(非常にレアケースですが)は解体するのです。
予め「入らない」ことが確実な場合は搬入元で解体しますし。
搬入先で「あらら、これは解体しなきゃ入らんね」という場合はその場で解体します。

ここでも運送会社の実力が試される、というわけです。

ピアノ運送に伴う「搬入経路の確認」について

とても想像力のあるお客さまの場合、「ウチの●●の部屋にピアノ入る?」と質問されることがあります。
過去の経験上、「入らない」ことはほとんどありません(20年調律師やってますが、1件だけですかね)。

心配な場合は運送会社に「事前の搬入経路確認」をしてもらうこともできます。
「経路確認」の料金は¥3,000~¥5,000程度
ただ、実際にその運送会社に運送を依頼すれば「運送料金」から「経路確認の料金」を差し引いてもらえますので、実質無料です。
経路に不安がある方は「経路確認」してもらうと安心ですね。

ピアノ運送・移動後の調律について
~運送後調律「2つ」の意義~

移動・運送はピアノにとって負担のかかるものです。
移動時にかかる直接的にかかる「物理的な負荷」と、
環境変化による間接的にかかる「変化による負荷」です。

ピアノ運送後の調律

運送・移動後、内部の状態確認をする

移動後に調律を行うのには「2つの意味・意義」がございます。

1つ目は移動・運送で狂った音程を整えること
2つ目は「移動による影響がないか(不具合がないか)のチェック
アクション(打弦機構)などが正常に動くかの確認」です。

 

移動後の内部状態確認

国内・国外のピアノメーカーの「納入調律」は1週間~2週間以内に行う

移動後の調律時期については諸説ありますが、
移動後1週間~2週間以内には行うのが良いかと思います。

「内部の状態」を早めに確認し、問題があった場合迅速に対応するためです。

この早期確認の重要性は、
YAMAHA、KAWAIといった国内メーカーや
スタインウェイなどの海外メーカーが
新品納入後の「納入調律」を一週間以内に行うことからもわかります。

また、国内の中古ピアノ販売会社も「納入調律」を一週間以内に行います。

運送後の調律についてのご相談・お見積り(フォーム)

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ピアノ運送の際、一緒に考えたいこと
~経済的な面からも「運送」は絶好の機会~

「メンテナンス」や「クリーニング」の必要性
~ピアノを「楽しく」弾ける状態を整える~

運送で動かすピアノは、「長年同じ場所に置かれていた」ケースが多く、内部の「ホコリや汚れ」、湿気の影響、部品の劣化が進んでいる可能性があります。

運送というのは絶好の機会です。
点検・調整することで、新しい環境で最適な状態・音色を楽しめます。
運送時に運送会社の工房にてオーバーホール等、運送時にしかできないメンテナンスもございます。

  • 1年以上調律していない
    → 【基本調律】 正しい音程に戻し、気持ちよく練習を再開しましょう。

  • ピアノ内部にホコリが溜まっている
    → 【内部クリーニング】 虫害やカビ予防、部品の動きをスムーズにする効果も。

  • 外装がくすんでいる・手垢が目立つ
    → 【外装クリーニング】 見た目が綺麗になり、ピアノへの愛着も深まります。

  • 何年も弾いていなかったピアノ
    → 【全体点検+調律】 眠っていたピアノを目覚めさせ、最適な状態に。

  • お子様がこれから使うピアノ
    → 【基本調律+点検】 正しい音感教育のためにも、定期的なメンテナンスのスタートに。

  • 中古で購入・譲り受けたピアノ
    → 【全体点検+調律】 一度リセットすることで、安心して長く使えます。

運送見積もりと同時に、ピアノの状態チェックやメンテナンスのご相談も承ります。
もちろん無料で行っております。
二度手間を防ぎ、トータルコストを抑えることにも繋がりますので、ご活用ください。

ピアノの中には「ホコリ」「カビ」が潜んでいる

ご自宅でも可能です、ピアノクリーニング

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地味に問題となる「ピアノ椅子」と「インシュレーター」
~付属品も「ピアノ環境」の1つ~

「ピアノ椅子」「インシュレーター」もピアノ移動・運送に伴い考えたいところです。

「インシュレーター」ですが(インシュレーターというのはピアノのキャスター下に設置する「お皿」のようなもの)、
「耐震用のもの」と「そうでないもの」がございます。
耐震用のものでない場合は、移動の際に耐震用のインシュレーターへの交換をおすすめします。

ピアノ運送会社では「耐震用インシュレーター」「ピアノ椅子」のリニューアル品を売っているところも多いです。
新品で購入すると、「インシュレーター:¥20,000程度」「ピアノ椅子:¥8,000~」ですが、リニューアル品ですとそれぞれ¥5,000+税くらいです。

運送会社の担当者に
「中古・リニューアルのインシュレーターってありますか?」
と聞いてみるもの良いですね。

最後に:「ピアノ運送業者選び」はなかなか大変

「ピアノ運送会社を選ぶこと」はなかなか大変な作業です。

私は日々運送会社の方々とやりとりをしていますが、そうでない方が探すとなると骨の折れる作業です。
これは一括見積サイトの功罪だと思いますが、選択肢が増えるのは良いことですが、玉石混交の中から1つに絞る作業は大変な労力を要します。
「これはかかえって混乱するのでは?」と思うことも多々あります。
残念ながらピアノの損傷というトラブルもないわけではありません。

ピアノの運送は「それに伴い考えなければいけないこと」も結構ありますね。
「防音」や「設置場所」等々。
自分で記事を書いていても「結構めんどいな・・」と思ってしまいました。

実は「ピアノの置き場所」や「防音」に関しても考えなければならなのですが、記事が長くなりそうなので、またの機会に書きますね。
1つ1つ懸念事項を確認したり、ネットで調べたりすると「まぁまぁ面倒」です。

お付き合いのある調律師・技術者さんがいらっしゃる方は、聞いてみるのが良いかも、と思っております。
もちろん私に相談していただいても全然かまいません。
運送に関するお問い合わせ・ご相談(フォーム)

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この記事を書いた人

野沢ピアノ 代表
野沢 信之(のざわ のぶゆき)
ピアノ調律師(国家資格)
あん摩マッサージ指圧師(国家資格) 鍼灸師(国家資格)

1975年生まれ。千葉県出身。明治学院大学卒業後、出版社に3年半勤務した。その後、千葉県にあるピアノ工房にて5年勤務の後独立。
現在「野沢ピアノ」代表。公共施設・一般家庭のピアノメンテナンスを行っている。「お子さまのピアノレッスン」に関するピアノのご相談へアドバイスすることが多い。

治療院「けあ・あんだんて」代表でもある。一般社団 障がい児マッサージ普及協会所属。主に「障がいを持ったお子さま」への訪問施術・治療を行っている。
千葉県生涯学習大学講師を含め「地域医療」や「障がい者への理解普及」等の講演活動も行っている。