最終更新日 2024年10月22日 by nozawa88888@gmail.com

ピアノのカビ取り・カビ掃除について

みなさまからのご相談で、とても多いことの1つが「ピアノに発生したカビ、どうしたら良いですか?」「ピアノからカビ臭いにおいがするのですが・・・」というものです。

ピアノの表面(黒い塗装面)などに付着している場合は、柔らかい布なのでふき取っていただくのが良いのですが、それでも取り切れない場合は、ご家庭で対応しきれませんよね・・・。

中には「ご家族・お子さまがアレルギー」で健康上の問題があったりすると、さらに心配です。
今回はお客さまから「ピアノの表面のカビを掃除したい・ピアノがカビ臭い」とのご相談で、対応させていただきましたので、その報告です!

ピアノのカビ取りに市販の「カビ取り」は使えるのか?

作業報告の前に、「よくある質問」のお答えから・・・、使えないのです(涙)
ピアノ表面の塗装面や鍵盤表面はとてもデリケート、塗装が割れたり変色したりする可能性も否定できないので、やめておきましょう!

それではピアノのカビ取り、やっていきます!

まずはピアノを解体していきます


ピアノを解体していきます、どこにカビが発生しているか?を確認しながらの作業です。

ピアノ内部のカビを除去


今回は「棚板(鍵盤の下部分ですね)」と「親板裏(ピアノ側面の裏側)」にカビを確認。

アクション部にカビがなくてホッとしております。
(アクション部にカビを除去するのは、アクションも解体しなければならないので大変)

早速、専用の除菌剤でカビを除去していきます。


除菌剤を金属部(鍵盤したのキーピンという部分)に付着させたくないので、かなり地味かつデリケートな作業。

内部・カビ取りのbefore&after


底板(ピアノ下を開けたところ)にもカビは発生していましたので、ここもしっかりと除菌。


棚板(鍵盤下の板)です・・・。

ちょっと画像だと伝わりづらいかもですが・・・、伝わって欲しいです。


親板(ピアノ側面の裏側)。
カビはピアノの表面(黒い塗装面)よりも、内部に比較的多く発生します。
内部は「ニス処理」等をしていませんので、木材の表面は「ザラザラ」しています。
カビが繁殖しやすい環境なのです。

外装のカビを落としていきます


今回は珍しく外装にもカビが発生しておりましたので、こちらもお掃除していきますね。


除菌剤は使えないので、研磨剤でカビを落として・・・、
表面の汚れもひどい状態でしたので、ポリッシャーで磨きます。

外装・カビ取りのbefore&after


こちらは「袖口」部分


「親板」というピアノ本体部分のカビもきれいに除去できました。


こちらはピアノの「脚部」、ここはカビではなく、汚れが酷い部分でした。


鍵盤脇の部分、この部分が綺麗になると・・・、何故かピアノ全体の印象が変わります(個人的意見)

作業終了!


内部・外装のカビ取り・除菌、外装磨き・金属磨き、調律等、全て終える頃にはすっかり日が落ちておりました。

作業時間は5時間程度。
お客さまにも喜んでいただきました。

野沢ピアノでは、この「カビ取り・除菌」作業①ピアノクリーニング②総合メンテナンスのサービスの一環として行っております。

ピアノのカビ問題、なかなかやっかいな問題

みなさまもご家庭でご経験があるかと思いますが(お風呂のカビなど)、「カビの除去」は一回で取り切れないことも多いです。

過去には「お子さまがアレルギー」をお持ちで、ピアノを実家から運んできた頃からアレルギー症状が強くなった・・、というご相談で対応したケースがございました。
なかなか深刻で、難しいケースでしたが「ピアノに付着するすべてのカビを完全に除去するのは難しいかも・・・」と前置きしたうえで行いました。

その後は症状も落ち着いている(毎年定期調律をしています)とのことで、私も安心しています。
もちろん、お子さまのアレルギーとピアノカビがどの程度関連しているのか、私にはわかりませんが、この「ピアノのカビ」問題はそれだけ「難しく」「デリケート」「やっかいな」問題だな・・・、と感じています。

追記:黒のピアノ、塗装は3種類、いずれもアルコール消毒はNG

この記事を読んで頂いた方から「自分で除菌(アルコール除菌)してもいいですか?」とご質問がありました。
この記事中でも触れておりますが、各メーカーは基本「NG」回答で、「柔らかい布でふき取ってください♪」というのが公式見解。

ここで、少々込み入った話を追加しますと、黒いピアノ同じ黒でも3種類あります。
(3種類の塗装が施されています、本体が全部同じ種類の塗装のピアノもあれば、部品によって異なるパターンもあります・・・、塗装の話は3本くらい記事が書けるくらいなので別の機会に)

① ラッカー塗装(古いピアノはこれです、昭和50年代初頭まで)
アルコール消毒液を使用すると、すぐに塗膜が融解・軟化する可能性が・・・。
とにかく「デリケート」なのです、この塗装。
研磨剤での磨きも、職人が一番神経をすり減らす塗装です。

② ポリエステル塗装(昭和50年中頃~現在)
アルコール消毒液に対して「比較的」耐性がある、ただし頻繁に使用すると塗膜が劣化する可能性が・・・。
とまぁ、「ラッカー」に比べると「強い」塗装ですが、やはりおすすめはできません。
ちなみに研磨剤での磨きに対しても、物理的な力に対しても「強い」です。

③ プラスチック塗装(拍子木などの部品)
黒いピアノは基本上記の2種類の塗装なのですが、部品によってはプラスチック塗装が施されています。
アルコール消毒液に対して耐性も比較的ありますが・・・、白く変色することがあります(涙)

というわけで、はやりピアノのことだけを考えると、避けたほうが無難です。
(コロナ渦の時に「鍵盤の除菌について」の記事を上げました、あの時は「緊急事態;鍵盤の除菌剤も売り切れ続出」でしたし、鍵盤は比較的安価で張替え可能でしたので、今回とは逆の見解でした)

何かご不明点などございましたらご相談ください♪